魚になる!?

 その昔、不摂生から体重が激増した時に、突如不整脈に襲われ息もできず、脂汗が出てきてものすごく苦しんだときが2、3度あった。それから、ちょいと運動せねばならんかなと思って始めた水泳。平泳ぎはできたけれど、クロールは苦手で25メートルを必死で泳いで息も絶え絶えの状態だった。クロールの方が運動量も多いと思って始めたわけだが、下手過ぎて長く泳げない。人の泳ぎを色々見たり、泳ぎ方の本も買ったりしてみたが、自分の泳ぎが全然できなかった。前にも書いたことがあると思うけど、ある日、水泳のインストラクターだろうか(僕は習ってなかったけど)、とても美しい泳ぎ方をしていたので、それを水中にもぐって見てみた。なんとも優雅でゆっくりで、水しぶきも立てることなく、すいーっと泳いでいた。これだ!と思ってよーく観察すると、これが、ワンストロークワンキック、つまりは2ビートクロールだったんだね。

 それ以来(もう10年以上前からだけど)その泳ぎ方でいこうと自分なりに工夫する。でも我流なのでよくわからない。試行錯誤の上で、たどり着いたのが、歩くように泳ぐということだった。まずは動かないで手を伸ばしてうつ伏せ状態で水に浮く。そんでもってボートのように手で進める。次に水を掻く手と同じ足をキックしてみる、というようなことから始めて、息継ぎは3拍子で左右でするようにしてと意識して・・・、てな感じでやってきて、ようやくずーっと泳げるようになった。我流なのでいいかどうかわからんけれど、まあ楽だからいいとした。つい最近、ネットで調べたら僕がワンストロークワンキックと言っていたのは2ビートクロールというもので、とあり、動画もあってみると大体同じということが分かった。ただ、掻き方や、キックは我流だから多分無駄が多いんじゃないかと思う。

 ということでまだ未完成で、一番効率のいい楽な方法を手探り状態で確かめつつ泳いでいるわけなので、やっぱり人はどんな風に泳いでいるのかなと気になる時もある。やたら手の動きが早い人、バタ足がやたら多い人、やたら水しぶきの上がる人、色々だ。半身がマヒしてる人もそれなりに泳いでいる。すんごい早い人もいる。水泳クラブに所属してたりするような若者たちは鍛えられた体で、元気にそして嬉々としてぐいぐい泳いでいる。ウーム、おいらはとても早くは泳げんし、それを目指すわけでもない。相変わらず誰よりも一番遅いくらいのストロークで泳いでいるようだ。理想は魚のように泳ぐことか・・・。魚にも色々だけれど、小魚みたいな泳ぎではなくて、魚じゃないけどイルカとか、大きめのタイプがゆっくり泳ぐような・・・なんてことを思いつつ。そんな泳ぎの中でふと頭に浮かんだのが「魚は他の魚の泳ぎは気にしない」という言葉だった。なんかぽっかり浮かんできたので、なぜ浮かんだのかわからない。でもすごく面白くて笑ってしまった。

 人も歩いてる時、よっぽど変わった動きをしてる人を見たら別かもしれないけれど、ほとんど人の歩き方を気にせず歩いてる。泳ぎが自然になるとそうなるのかな。まだまだ僕の泳ぎは自然じゃないと思うけれど、自分の“楽”(=自然)を見つけるようにすることに専念することにしよう。いつか魚のように泳げる日がくるであろうか・・・。魚が他の魚の泳ぎを気にしないように。