インド映画『バーフバリ王の凱旋』を観て

 コロナウイルス蔓延防止のための自粛要請により、自宅に籠る時間が多くなった。録画した映画を観る時間も増えた。ここのところ、『バーフバリ』1,2にはまってしまい、特に2を繰り返し観ている。しかもある部分は何度も。それは、バーフバリが奴隷戦士カッタッパと民衆のことをより深く知るため、素性を隠しながらの旅の途中で、クンタラ王国の王の妹デーヴァセーナに出合ったところからだ。ここから、バーフバリとカッタッパが、クンタラ王国に突如攻め入る何万という賊軍ピンダリをあっという間に打ち負かし、素性が明かされるまで。

 盗賊を倒すデーヴァセーナの剣技と美貌に惚れ、彼女もバーフバリに一目で好感を持つ(既に好きになっている、と思う。一目ではなく、もう少し後かもしれないが)。しかし、あほで武術も知らん男と侍従役のカッタッパに紹介されて、半信半疑。まあガタイもいいから、鍛えれば戦士になるんじゃないかと城に住まわせる。根はいいが小心者で武技も下手な、デーヴァセーナの従兄クマラが指南役。ところがそのクマラが突如すごい活躍を見せる。傍にバーフがいる時に。そしてバーフ達を怪しむデーヴァセーナ。この辺で、彼女はバーフを既に好きなのだが、あほじゃなくて好きな相手としてふさわしい人であってほしいという願いを込めた表情。デーヴァセーナ役のアヌーシュカ・シェッティがすんばらしい。

 そうこうするうちに、突如賊軍ピンダリが深夜に攻め込む。デーヴァセーナの前にも続々と襲いかかる敵。弓矢で一人応戦するが、もはや絶体絶命。その時である。後ろから3本の矢が同時に飛んできて、襲いかかる寸前の敵を倒す。この時の映像がとても好きなんです。背後からデーヴァセーナを撮っているので、彼女は矢が後ろから飛んできて敵に刺さったことしかまだわからない。ここで彼女は驚いて一瞬動かなくなる。どうして!まさか!そしてひょっとして!この動揺と期待!この時カメラのピントがその動揺と同期するように(させていると思う)、ピントが一瞬ほんの少しぼけてまた合う(2度くらいあるか?)。すごいと思った(こういうテクニックはあるんだろうけど、素人なので初めて気になりました)。そして振り向くと、やっぱり!飛びながら3本の矢を同時に放つバーフバリが!そして次々と3本の矢を放ちながら敵に向かって進み、彼女のそばを過ぎる。この時の彼女の、バーフを目で追い続ける姿も泣ける。そして、バーフが振り返り、彼女に向けて3本の矢を放つ。それは彼女の頭をかすめ、1本はイヤリングを鳴らして後ろの敵を倒す。彼女は微動だにせず大きな目でほんの少しにこやかにバーフバリを見つめる。ここを言葉にすれば、「やっぱりあなただった。私が思ってた通りの人だった。好きになったのは間違いじゃなかった。」。そして完全に愛したのである。

 長々書いた。小説や物語を読まない最近だが、昔は読んでいた。そのせいだろうか。何かこの一連のシーンは英雄物語の典型のような気がして懐かしんでいるのか。あほな男が実はすごい、という設定はこちらの願望もあるからなのか?わかりません。

 バーフバリが惚れ、デーヴァセーナが惚れ返すこの一連のシーンはわずか20分くらいだと思うが、その筋書きとカメラ、そして音楽は、本当に見事だなあと思いました。それにしても全編そうなのだがカット数もめちゃくちゃ多い。カット数が多く、1シーンの余情が少ないから、多分こちらの感情も早く高ぶるのかもしれない。いやきっと早く高ぶるように編集している。まとめるようですが、映画の凄いところを覗いてしまったような気がしました。コロナウイルスを忘れさせる映画のひとつです。